2015/10/11
西岡小十絵粉引茶碗
唐津陶の研究と作陶で知られる小十さんの絵粉引茶碗です。小山冨士夫指導のもとで小次郎窯を開いたのが1971年・54歳の時だそうですから、私がこの茶碗に出会ったのはそれから5年後くらいの頃ではなかったでしょうか。小十さんの略歴をみると、その頃荒川豊蔵、藤原啓など錚々たる方々が窯に行っておられるようで、互いを刺激し合っていたのでしょう。今となっては皆様故人となった日本の名工達です。
この茶碗は売り物ではなかったのですが、当時親しくしていたお店の店主に無理矢理譲ってもらったものです。
その店主もこの碗は売り物にしないということで無理矢理小十さんに箱書きをしていただいたそうですが、帰途京都に立寄り、南禅寺さんの誰方かに残雪の銘を頂いたようです。
聞いた話ではこの碗は初めての粉引だったということですが、小十さんほどの作家が火割れの入った高台の茶碗を売り物にするはずもなく、店主も私に見せたのが運の尽きで小十さんとの約束を破ることになってしまいました。
40年以上も経ってもう時効ですけれど。

石ハゼの具合も程よく、鉄絵にも勢いがあります。


しばらく使用し、少しばかり雨漏りも出てきて残雪の風情が更に増しました。



見込みの茶溜まりもこれまたほど良く、茶筅摺りは滑らかに仕上がっています。

畳付きの座りがやや悪かったのでちょっと擦ってしまいました。これは少し後悔しています。



この頃の小十さんの字は勢いがあります。
作品も初々しい感じと勢いが感じられて大変気に入っている一品です。


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