2016/03/12
古伊万里 山荘観梅図壺
今年の梅は盛りを過ぎて、いよいよ桜待ちの頃となってきました。今年の桜は3月20日あたりというような話も聞こえてきます。25年ほど前に入手した高さが30センチ程の梅を主題とした古伊万里壺です。
描線・染付の発色・肌合い等から寛文年間(1661-73)を下ることはないものと考えています。
この時代の製品には、今回の壺のように初期伊万里の匂いを残した自由奔放で、筆勢に勢いがあり重厚で力強い作品群と、藍九谷といわれるやや細い線描で、素地も薄くより白い肌合いのどちらかといえば繊細な作品群が混在している時代のように思います。
今回の梅の描法は有田南川原の窯ノ辻窯から出土の梅文茶碗によく似ています。窯ノ辻窯は開窯が1650年代あたりということですから、時代的には符合するものがあります。
尤もこの窯の主要産品は主に茶碗だったらしいので、壺が作られたかどうかは分かりません。
首が短い、というより首がないと言っても良い造形ですが案外と細目の姿には似合っているように感じます。
柴田コレクション第二集の図録84,85の壺の首が同様の造りです。
まあ絵に惚れて買う壺だからなんでもよく見えるのですが。
岩の裏から梅の巨木が壺を一周し、太い竹と竹葉がアクセントになっています。岩に寄り添って山荘があり、室内に高士が二人。ということで山荘観梅図としました。



裏絵になっている竹の葉と鳥のカットが印象的であり、この余白が力強い表絵を見た後の昂揚感を鎮めてくれるようです。この飛翔する鳥の描法も初期伊万里に近いものではないでしょうか。













大橋康二さんの著書『古伊万里の文様』
梅7 窯ノ辻窯出土の梅の描法に大変よく似ているように思います。
また、肩に巡らされている七宝文様も同時代の窯ノ辻窯出土片に見られる文様です。


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